大判例

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大阪地方裁判所 昭和29年(ワ)5417号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕標記事項に関係のある限度であげると次のとおりである。本件家屋(木造瓦葺二階建店舗―実際は居宅―一棟建坪二〇坪七合九勺二階坪一一坪五合およびこれに附属した木造トタン葺建物建坪約六坪)の賃貸人である原告は、我国有数の土木建築会社であり、大阪市西区土佐堀通二丁目二番地に大阪支店の社屋を有し、かつ、それに隣接した宅地および同宅地上にある本件家屋をそれぞれ所有していたが、同家屋の賃借人である被告らに対し、正当事由に基く解約申入を理由として、本件家屋の明渡を求めた。裁判所は、次のとおり判断して、原告の右請求を認容した。なお判決主文には、被告らに対し単純に、原告への本件家屋明渡を命じている。

〔判断〕「(前略)を綜合すると、原告は大阪市西区土佐堀通二丁目一番地の一、四、五、二番地の一、三、同区土佐堀船町二一番地の五、同区江戸堀上通二丁目五番地の二、五に合計五八三坪余の土地を所有し右各筆の土地は各隣接して大凡三角形の一体をなしているが、原告の大阪支店社屋(建坪一二九坪余)三階建は右土地の西端にあり且その玄関は巾員六米の土佐堀通に面していること、原告会社は業績発展にともないかねてより右社屋を増築して事務室、応接室、倉庫、会議室、食堂、社員アパート等を増設し且玄関を前記三角形の土地の南東側の電車通に面して新設すべく計画し、既に昭和二九年七月二一日取締役会の決議で右計画は承認されたこと、しかるに本件家屋は前記三角形の土地のほぼ中央部北寄りを占め本件家屋の約七、八割が原告の計画する増築社屋の建築予定地一一七坪余に入るため、本件家屋を取毀たなければ原告の右増築は不可能であること、本件家屋の東端には原告所有の建物二戸があつたが原告は昭和二八年七月頃被告等及び右二戸の賃借人を相手取り大阪簡易裁判所に調停の申立をなしたところ、調停の結果右二戸の賃借人はいずれも金四〇万円乃至五〇万円の立退料を受けて右家屋より立退いたので、原告は直ちにこれを取毀つたこと、従つて被告等が本件家屋を明渡しさえすれば原告は即時にその社屋増築工事に着手することができる状態にあることを認めることができる。

一方被告等の事情について考えてみるのに、(中略)を綜合すると、被告等は昭和一三、四年頃以来家族とともに本件家屋に入居し印刷業を営み来つたことを認めることができ、その得意先関係その他の生活関係がらいつても本件家屋を明渡し他に転居することは相当の不利を生じ犠牲を払わねばならぬことは明白であるが、原告が本件家屋の明渡をもとめる必要性に比し未だ忍ぶに堪えたものと考えて差支ないであろう。従つて被告等のために適当な移転先があり移転について被告等に多大の経済的負担を生ぜしめない限り被告等は右のような不利を忍んで原告のために本件家屋を明渡すべく、原告がその代償として被告等のため転居先を確保し又は移転のため被告等に生ずる経済的損失の全部又は大部分を代つて負担するにおいては被告等は原告の明渡請求を拒絶すべき理由がないと解するを相当とする。

そして本件についてこの関係を検討してみると、証人纐纈忠行の証言によれば原告は前記調停において被告等に対し立退料として金百万円を支払うべきことを申出たが被告等は更に多額の立退料を要求してこれに応じなかつたので調停は遂に不調に終つたことを認めることができる。

以上の諸点を考慮すれば本件家屋の明渡をもとめる原告の必要性は被告等のその使用の必要性より大きく、被告等が明渡すことにより受ける損失は原告が負担提供すべき代償に比しなお軽きものありというべく、本件において原告がその代償提供の意思を撒回したと認められる事実乃至証拠は存在しないから、原告の解約申入は到達後六ヶ月の経過とともにその効力を生じたものと謂うべく、(中略)被告等は本件家屋を原告に明渡すべき義務を生じたものと謂わねばならない。」

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